「世界で最も悲痛なラブストーリー」

「胸に睡蓮が生える話」と聞いてどう思うだろうか。

『本屋の森のあかり』という漫画で(これはこれでオススメ)、最終話で紹介されていたのがこの「胸に睡蓮が生える」という小説だ。

本屋の森のあかり(1) (Kissコミックス)

磯谷友紀/講談社

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『うたかたの日々』、フランス語原題 " L'E(上に ' )cume des jours "をそのままに訳した「日々の泡」という翻訳もあるが、やっぱりこちらのほうが好みだ。翻訳者が意識したかどうかは知らないが、「よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし。」という『方丈記』の文章を連想させ、本を開く前からイメージが湧くからだ。

うたかたの日々 (ハヤカワepi文庫)

ボリス ヴィアン/早川書房

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パリに暮らす若者たちを中心とした物語だが、内容はSF的でもあり、シュールレアリズム的な文体で最初はちょっととっつきにくい。「なんだこりゃ」と思う表現や物体が次から次へでてくる。しかし読み進めるうちにどんどん作者が描く奇怪だけれども美しい世界にひきこまれていく。

死んだ親の遺産で自由に暮らす21歳の青年コラン、彼は恋をしたいと願っている。とある日、彼はクロエという繊細で美しい少女に出会い、二人は恋におち、すぐに結婚をする。
しかし、クロエは新婚旅行の途中で「胸に睡蓮が生える」という病気にかかる。この病気の療法は、周囲に美しい花を置くこと。高価な花はコランの財産を減らしていく。彼はクロエのために生まれて初めて働くことになるが…。

この説明で「胸に睡蓮が生える」という病が、クロエという少女にぴったりということが分かるだろうか。美しく繊細なクロエがかかる病気は、「胸」(「肺」)でないといけないし、寄生するのは「睡蓮」でないといけない。他の箇所でも植物でも駄目なのだ。
そしてこの小説は「うたかた」――泡のような「青春」に溢れている。愛のために命をかけるコランがそうであるし、親友のシックはパルトル(サルトルのもじり)に傾倒している。誰にでもちょっと覚えがある(あるでしょ!)、青春の痛ましさ、ある意味での「イタさ」がいっぱいだ。
この小説の主要人物に誰も悪人はいない。ただ、誰もが「愛」や「思想」に全てを懸けすぎて少しずつ歯車が崩れてくだけなのである。

昔はこういう幻想的な小説はどうしても受け付けなかったが、読めるようになってきた自分にも驚いた。年齢を重ねるとともに、読書の幅も広くなってきたということか。



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# by sophie_c | 2017-04-11 18:10 | livres

第三次(くらいの)天童荒太ブーム

天童荒太という作家が昔から好きである。
「永遠の仔」の作者と言った方が伝わりやすいかも。この作品は高校生に出会って貪るように読んだ。

永遠の仔〈1〉再会 (幻冬舎文庫)

天童 荒太/幻冬舎

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数年前、「悼む人」で直木賞を受賞したときは、この作品だけではなく他の作品も読み直した。

悼む人

天童 荒太/文藝春秋

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そして、数年前に買って途中まで読んだのはいいものの、忙しすぎて「積ん読」状態になっていた最新作をようやっと読んだ。仕事も辞めて、ちょうど今エアーポケット状態なので時間があったのだ。

歓喜の仔 (幻冬舎文庫)

天童 荒太/幻冬舎

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……いや、本当に本当に「圧巻」の一言に尽きた。単行本の上下巻で読んだのだが、上巻は果てしなく登場人物たちに過酷な状況が続き、読んでいるのが辛くなるが、止められない。(この作家の作品はいつもこうである。)そして、下巻では上巻でちりばめられていた「伏線」が見事に回収され、「歓喜」と呼ぶのにふさわしい、締めくくりだった。

この作家は深刻なテーマをいつも扱う。「そんなことを考えて何になるの」と言いたくなる、鉛を飲まされたような気分になる。書きあげるのも相当な体力が要るのだろう、この作家は寡作で数年に1度しか作品を書かない。けれども(本人は望んでいないだろうけれど)、出す作品はことごとく賞をとる。自分もこういう人でありたい、と思う。

よく分からないメタファーが散りばめられた「文学的な」作品よりも、この人が書くテーマに惹かれるし、この人の作品が好きだ。


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# by sophie_c | 2017-03-19 11:10 | livres

シェイクスピアだって驚きの展開

大変遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。

昨年はまさに怒涛の展開が連続し、新しいことが始まり、決断をする場面もたくさんありましたが、なんとかやってこれました。そしてダメ押しのように、ラスト1ヶ月に、激しい展開がありました。
自分でも予想できなかったことで、しかしずっと絡まっていた糸が簡単にするすると解けていくような、そんな心境にもなりました。

年が明けて三ヶ月、初めてのことだらけで忙しくなります。
嵐のように時折不安が襲いますが、なんとかやっていける…と信じています。

2017年は留学した2011年と同じように、自分にとって忘れられない年になるでしょう。

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# by sophie_c | 2017-01-14 23:24 | jours

本当に大切なことは目に見えないんだよ。

2011年、それまでの貯金○万円貯まり(それが理由ではないが)、フランスへ留学した。
日本語の文学を研究する人が、国語の先生が何故…と雑音が聞こえた。しかし自分にとってはあれは半年にも満たない経験だったけれど、貯金を使い果たした意味はあった。
その後の研究は指導教官の専門により近いものになり、細やかな指導を受けることもできたし、
巡り巡って、今年度名指しで新しい大学の仕事についた。より自分の研究に近く、そしてそれがより広がるものに。
当時は、「今留学しなければ、多分ダメになる」という妙な焦りで決めたのだけれど、結果的に成功だったのだ。

2016年、また同じぐらいの貯金が貯まり、どちらを選ばなければならないか決めなければならなくなった。
今年度からの仕事が予想以上に大変で、責任も重く、準備に時間がかかった。
秋になれば多少は楽に……と思っていたがそうはならなかった。
厄年なのか、この2年の間に新しい病気にいくつかかかり、今年度はいろいろな原因で半年で体重が5キロ減った(これまあ嬉しい)。

秋口からずっと逡巡していた。来年度も同じように働いたとして、自分の「本分」である研究ができるのだろうか。今年度は全くする暇がなかったけど(指導教官はそれで怒る人ではないが)、来年度からは慣れてきて少し余裕ができるから大丈夫なのじゃないだろうか。多少踏ん張れば、なんとかなるのでは……。
心の奥底から聞こえてきた。「もうダメだよ。踏ん張れないよ。20代のころの体力はないし、いろいろな病気にかかってこのペースで仕事をして、結局自分の研究はできてないじゃない。今までいろいろなものを犠牲にしてきたのに、今になって自分の研究を辞めてもいいの?」
「でも、」と自分自身で反論した。「その結果収入は安定しないし、また身内を困らせたり心配させたりすることになるよ」
ずっとその繰り返しだった。信頼できる何人かに相談したけれども明確に「こうすればいい」と答える人は少なかった。

結果、「踏ん張れない」という結論に達した。4年間続けてきた仕事を辞めることにした。結局は最初に聞こえたきた自分の裡からの声に従ったのだった。2011年に留学した時と同じように。

辞めてしまった後の不安はあるのだけれども、この決断でよかったと思う。これから3年間は今までよりかは、博士論文を書くための時間を割ける。
このことを報告した時、指導教官は言った「嬉しいですよ。」と。自分が最も尊敬する人の一人にこう言葉をかけられて、それだけでもよかったのじゃないか。(「依存心が高すぎる」と誰かがいいそうだけれど)

この決断が後々に「あれでよかったのだ」と思えるように、今後生きていければいい。そういう生き方をしよう。




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# by sophie_c | 2016-11-04 00:26 | jours

為せば為る

夏休みが終わろうとしています。
市井の人々が休むお盆も、我が家は特殊な事情で1年で1番忙しい時期です。
休みらしいことと言えば、「恐竜博」に行ったぐらいです。専門家の専属解説付きで、毎回(意外といる)周りの恐竜好きに羨ましがられます。

さて、4月20日の記事にでも書いた通り、6月19日にフランス語検定3級と準2級第1次試験(準2級から第2次試験があるのです)を受けに行ってきました。
試験の勉強をし始めた当初は、「今回は3級合格を目標で準2級は秋の試験で本気出そうかなあ」と思っていました。
しかし、「ひょっとしたら3級でさえ受からないのかも」という不安に陥りました。
なんていったって、積み重ねの文法知識がないのです。

留学中の授業でも、日本の学校の(いわゆる高校の「グラマー」)ような文法授業スタイルではなかったし、帰国したからしばらく通ったフランス語教室も同じでした。どちらかというと会話やいろんな文章を読んで、そこで出てくる文法を学ぶというスタイル。これはこれで、とても楽しいのですが、やっぱり文法をシステム的に教わるのは重要だと思いました。日本の英語教育で批判されている部分だけれども、やっぱり外国語学習には必要な要素だと思います。つまらないけれども。

というわけで3級の参考書で「もう既に身についているはずの」と書かれてる文法知識も自分の中でよく整理されていなかったので、そこからの復習でした。10代のころはおそらくすいすい入っていったと思いますが、文法や慣用句などが頭に入らない。
その代わり長文読解や会話問題、リスニングはほぼできました。

そのような感じでたまにメニエルに邪魔されつ試験勉強を続けました。といっても1日に1時間が限度でしたが。

結果、3級は合格しました。しかも思ってもみなかった高得点。(欲を言えば90点欲しかった)
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そして準2級1次試験は、試験後すぐに模範解答が配られるのですが、「こりゃダメだ」と思って期待していませんでした。
ところが。
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合格してました。(結構ギリギリだけれども・苦笑)
各設問が何点取れていたかは分からないのですが、読まれるフランス語の文章を正確に書き取る(フランス語でディクテと言う)「書き取り」問題が思ったより取れていたのが勝因?だと思います。
まさか合格していると思っていなかったせいか、何なのか、今まで志望校に合格しても泣かなかったのに涙が溢れてとまりませんでした…。言ったら元も子もないが、6割が受かった試験なのに。

そして合格通知をもらってすぐに第2次の面接試験でしたが、こちらはほぼできたと思います。絵とそれを説明した文章を読んで、5つの質問に回答するのですが、4問は(おそらく)完璧に答えられました。1問だけちょっと詰まってしまったのが悔やまれますが…。
そして今か今かと待っていた8月12日の夕方、準2級の合格通知が届きました。
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面接試験は30点中26点。これは留学したおかげかな、と思います。

しかし、実は準2級合格は(例えば大学でフランス語専攻した学生から言えば)「当たり前」の世界。
上の2級から合格率が30パーセントとぐっと難しくなります。
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秋には2級を受ける予定ですが、これは本当に一発合格はないと思っています。
まあ1年かかっても2年かかっても、いつかは受かるだろうと信じて、少しずつ、休みながら勉強しようと思います。
難しくて嫌になるときもあるけれど、仕事や研究以外(厳密に言えば研究にはつながるものだけれど)の勉強をするのは結構楽しいです。

実は、ドイツ語も勉強したいなあ……と思ったりもしていますが、これはさすがに無理かなあ。



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# by sophie_c | 2016-08-19 01:20 | étude


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